イチオシレビュー一覧

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白い山茶花の花言葉は……

  • 投稿者: 藤倉楠之   [2023年 09月 29日 10時 58分]
主人公の青年は、穏やかだが人づきあいを好まない性格で、祖父の遺した古い家に住んでいる。祖父母の思い出の白い山茶花が毎年花をつけるその庭に、ある時、ふらりと迷い込んだのはどこか物憂げな女子高生。不思議な魅力を持つ彼女が気まぐれに訪れるのを、いつしか青年は心待ちにするようになるが――。歳の差も境遇の違いも超えて惹かれ合う二人の運命の糸の行末は?
繊細で美しい心理描写、情景描写でありながら、筆の運びにいっさいの無駄がなく読みやすい文章。スムーズなテンポで進み、ぐんぐん引き込まれる物語です。作中に登場する食べ物、花といったモチーフも、想像力を刺激してくれる素敵なものばかり。
視点人物は男性ですが、誠実なモノローグで綴られる落ち着いた物語は、女性読者様にもおすすめです!
初冬の花、山茶花を心に浮かべつつ、季節先取りの読書時間はいかがでしょうか? お口に合えば、続編「合わせの頃合い」もどうぞ!

あの花は今年も咲くか

  • 投稿者: 宵凪海理   [2021年 03月 16日 11時 51分]
見合い婚だった祖父母は、仲は良かったが気持ちには溝があった。
祖母は本当は愛されていないと思っていたし、寡黙な祖父は訂正をしなかった。
ただ、祖母が好んだ山茶花を庭に植え、その手入れを怠る事もなかった。

主人公は、祖父母の死後に住む者がいなくなった家を継いだ。
在宅の仕事をしながら、庭の管理をする日々のなか、見知らぬ少女が庭に入り込んでいて……少しずつ交流をしていくことに。
親の都合で転校する事になって、新しい学校でトラブルがあったと言う彼女。
かつて傷付いた青年が、いま傷付こうとしてる少女に、やさしい言葉をかけてくれて良かったなぁ、と思える短編でした。

閑かに秘められた恋を見届けたい方へ

  • 投稿者: 瑞月風花   [2020年 11月 17日 21時 36分]

じれったくて時に切なく、どうすれば良いのか分からなくなって……後悔して、諦めて。

このお話は燃え上がる恋のお話ではありません。どちらかと言えば、息を吹きかけては息を吹き返す火鉢の炭火、橙色の恋のような……。いえ、淡く優しい桃色の恋というべきかもしれません。

山茶花屋敷を譲り受けた主人公。白い山茶花は毎年のように花を満開に咲かせます。それは祖母が好きだった色の花。そして、祖父が祖母のために植えたという一本の山茶花はなぜかピンク色。だけどその山茶花は祖父が亡くなってから一度も花をつけてくれません。
どうしてピンクの山茶花は咲かないのか。
山茶花の花のお茶を飲みながら、山茶花の花言葉に耳を傾けて、……。
花が色付くには何が必要だったのか。色によっても違う花言葉とその意味を。

山茶花の花が咲く頃に、答えはきっと見つかるはずです。
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