イチオシレビュー一覧

「消してください」

心霊動画編集者への依頼の言葉はそれだけ──

何を消せばいいのか？
わからないままに彼は預かった動画を確認します

いわくつきの物件に、構わず住む彼には、五年付き合っている彼女がいます
彼女は幽霊役として活躍している女優さん
赤い唇がエロく、彼は動画を編集しながら、早くベッドへ行きたいと焦ります

彼女には霊感があるのか、ガンガンに暖房の効いた彼の部屋を「寒い」と言い──
そして彼が編集する動画に隠された、というよりあまりにもはっきりと映っているそれにも気がつき、しかし余裕の様子で先にベッドに潜り込んでしまいます

さて、「消してください」の意味とは……

これをもし、ありがちな『登場人物たちがやたら怖がって、読者も怖がらせようとするような』文章で書いていたら、ぶち壊しだったことでしょう。

淡々と、エロも交え、『生』を描く、その文章力──

作者は天才か！

本作の視点人物の男性は、心霊動画の編集を生業としていました。
男性には付き合って5年になる恋人がいるのですが、彼女は舞台や心霊番組の幽霊役で重宝されている役者です。
そんな何から何まで心霊尽くしの日々を送っている男性の元に、上客である心霊動画配信グループからの動画編集依頼が入ったんですね。
ところが普段は事細かな編集指示が入るのに、今回に限っては「消してください」と一言しか入っていないんです。
この普段にはない指示に興味を引かれた男性は覚悟を決めて動画を再生し始めるのですが、その動画に写っていた怪異は予想外の物で…
動画編集者と幽霊役の女優、そして動画配信グループ。
「冬のホラー企画３」の参加作品である本作は、怪異に対する三者三様のスタンスや見解がとっても興味深くて面白い御話です。